ハカイダー を語る

 ハカイダーはキカイダーを倒すために悪の組織「ダーク」が開発した戦闘用サイボーグである。
ダークはキカイダーの「良心回路」に対抗し、「悪魔回路」を開発した。良心回路は「心」というべきメカニズムであり、与えられた使命を遂行するために、自らの行動を決定する機能である。
この良心回路と同等の機能を持つ悪魔回路を備えたのがハカイダーなのだ。
「俺はお前等のように命令通り動く低能ロボットではない。」というハカイダーの台詞からもそれがうかがえる。
しかし、良心回路と全く同じものをつくり出す技術のなかったダークは、人間の脳を組み込むことでこの問題を解決した。
第一段階として、優秀な人間を殺してその脳をカプセル化し、怪獣ロボット・アカネイカに組み込み、一定の成果を得ていた。
悪魔回路はそれをさらに進めたものと考えていいだろう。
そしてもう一つ。ダークで製作したロボットよりも、キカイダーの生みの親・光明寺博士が製作したロボットの方が高性能なのだ。
ダークの首領プロフェッサー・ギルは、光明寺博士を捕らえてハカイダーを作らせ、その脳をハカイダーに組み込もうと考えたのである。

 さらに、悪魔回路の機能を最大限に引き出すために導入したのが血液交換である。
一定時間内に光明寺博士の体との血液交換を行うようにした。
血液交換は悪魔回路の機能を高める反面、ハカイダーに時間的制約を与えるというデメリットもあった。
それで敢えて導入したということは、デメリットを補って余りあるメリットがあったと考えられる。
血液交換には悪魔回路の機能をさらに高めることに加え、光明寺博士を体を生かし続けることで人質としての効果もあった。
初戦においては、ハカイダーが圧倒的なパワーでキカイダーを追い詰めた。
最期のとどめという瞬間、ハカイダーに血液交換の時間がやってきた。
血液交換をしなければ脳が壊死し、悪魔回路の機能が著しく低下するのだ。
ちなみにこの時点では、キカイダーはハカイダーの頭部に光明寺博士の脳があることを知らない。
したがってこの戦いは、両者による最初で最後のフルパワーでのぶつかりあいであったと言えるだろう。
結果は前述の通り、ハカイダーの圧倒的勝利であった。

 ハカイダーの使命はキカイダーを倒すことだけであり、ダークによる世界征服などは眼中になかった。
常に正々堂々とした勝負を望むハカイダーは、目的のためには手段を選ばないプロフェッサー・ギルとしばしば衝突するようになった。
プロフェッサー・ギルは、次第にハカイダーを疎んじるようになった。
そして、絶対の自信を持って派遣した怪獣ロボット・アカ地雷ガマに対し、キカイダーとハカイダーの暗殺を命じた。
アカ地雷ガマがキカイダーを倒せば、ハカイダーは用済みなのだ。
 ギルの期待に応え、アカ地雷ガマはキカイダーを倒した。
巨大地雷によってバラバラにしたのだ。
キカイダーを失ったハカイダーは、アカ地雷ガマに勝負を挑み、圧倒的な強さでこれを倒す。
しかし、そこには何の充実感もなかった。
自分の存在理由を失ったハカイダーは、自分を作ったギルを殺そうとする。
ギルは苦し紛れに、ハカイダーを作ったのは光明寺博士だと告げる。
確かに光明寺博士を催眠状態にして作らせたのだから、事実には違いないのだが…。
 光明寺博士が死ねば、血液交換はできなくなり、ハカイダーの脳は死ぬ。
ハカイダーの能力は戦闘員であるアンドロイドマン以下になってしまうのだが、自分の頭部に光明寺博士の脳が組み込まれていることすらハカイダーは知らない。
ミツコはハカイダーに、脳を返してくれれば「素晴らしい人造人間」に作りかえると言うが、キカイダーを失い、自分自身の存在意義を失っているハカイダーは拒否する。

 光明寺博士を殺そうとするハカイダーの前に現れたのは、ミツコによって途中まで修理された上半身だけのキカイダーだった。
光明寺博士に手出ししないことを条件に、キカイダーはハカイダーに勝負を挑む。
修理が完全ではないキカイダーと戦うことを潔しとしないハカイダーは、まず修理を完了させる。
そして修理直後では力が出し切れないとを考え、人間体での戦いを提案する。
 二人の死闘が始まった。
これは推測だが、キカイダーは最後の賭けに出たのではないだろうか。
ダーク基地内であれば、光明寺博士の体があり、手術室もある。
自分が勝てば即座に手術が可能だし、負けたらハカイダーに脳の返還を頼むつもりだったのではないだろうか。
自分との勝負を済ませたハカイダーなら、その願いを聞く可能性は高い。
したがってここでは、初戦以来のフルパワーでの戦いが繰り広げられるはずだった。


 いよいよ変身体での勝負を挑むハカイダー。
しかしキカイダーは変身回路がまだ直っておらず、チェンジできない。
そこへアンドロイドマンが乱入、二人の勝負は中断され、アンドロイドマンを相手に戦い始めた。
しかしその戦闘中、ハカイダーは突如出現した怪獣ロボット・白骨ムササビに背後から襲われ、駆けつけたキカイダーの腕の中で絶命する。
「どうせ殺られるなら、俺はお前に、お前に殺られたかったぜ、キカイダー…」
これがハカイダーの最期の言葉であった。

 ハカイダーとキカイダーの戦いで最も興味深いことは、どちらが強いのか、容易に判断できないということだ。
キカイダーは光明寺の脳があるために戦えず、ハカイダーには血液交換という時間的制約がある。
だから決着がつかない。
これこそ、理想的なライバル関係といえるのではないだろうか。



「ハカイダーその後」

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