勝手に「本能寺の変」
 
 私は、基本的に黒幕は存在せず、光秀の単独犯行であると思います。
 確かに朝廷がその存亡の危機に関して、光秀に対して何らかの働きかけがあったであろうとは私も思います。
しかし、それは要因の一つではあっても直接的な動機ではないと思います。
 私が考えの出発点は、よく言われる、変後の光秀の動きが遅すぎ、すべてが後手に回っているという点からです。
天下盗りこの動きの悪さが、どうも光秀らしからぬような気がしてなりません。
また、この点を黒幕の存在で補う説もありますが、光秀ほどの人物に信長殺しを納得させるほどの論理が存在するのか疑問に感じたのです。
また、いくら黒幕がいても、「正常な状態」の光秀ならば、適切な行動がとれたのではないかと思ったのです。
ここから、光秀の精神状態を考えるようになったのです。

 何よりも注目したいのは織田信忠についてです。
結果として信忠は死にましたが、それは結果論であり、信忠はその気になれば脱出できる状況にいました。
もし信長が同じ状況にいたら、真っ先に逃げて再起をはかったでしょう。
もし光秀が信長に代わって天下を取ろうとしていたのであれば、後継者である信忠は殺さなければならない相手です。
そうしなければ、信忠の元に織田軍団が集結し、光秀は滅ぼされてしまうでしょう。
綿密に天下取りを考えていたのであれば、それはあり得ません。
この「信忠問題」を説明できない限り、野望説は成立しないと思います。

 光秀謀反の原因は、「光秀のノイローゼ」だと思います。
 信長は家臣団の中では、光秀を最も評価していたと思います。
信長と光秀の二人の性格の違いを遠因として挙げたりもしますが、性格が違うからこそうまく行っていたのだと思います。
そのため、光秀には様々な要求が突きつけられます。
光秀もそれに応え、業績をあげてきました。
しかし、次第に信長の真意がつかめなくなってきたのではないでしょうか。
 家康の接待や中国出陣なども、信長にしてみれば、「これができるのは光秀しかいない。」というつもりで光秀に任せたのに、光秀は「なぜ自分にばかり?」という気持ちになったのだと思います。
それに林通勝や佐久間信盛の追放等も加わり、ノイローゼ状態になったのだと思います。
信長も、光秀に対して自分の真意を語ったりすることはないので、当然そうなります。
 ハ見寺の件でも、自分自身が神になるなどというのは、光秀にはとても理解できなかったと思います。
 やはり信長の真意が見えないと思ったでしょう。
今まで、光秀には信長の考えが見えていただけに、その衝撃は大きかったと思います。
そんな状態の光秀の目に、無防備で本能寺にいる信長が映ったのです。
真っ暗な状態でただ一筋の光が見え、ついそれに向かって突っ走ってしまったのです。
だからこそ、「光秀らしからぬ」行動になってしまったのです。
 信頼し、評価しているからこそ、相手が光秀と知った信長は、逃げることを諦め、「最期のひと暴れ」をしたののではないでしょうか。
本能寺以前の似たケースの場合、信長は常に脱出を図っているのに、本能寺でそうしなかったのは、やはり光秀を評価していたからだと思います。


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